PR

文庫化したら世界が滅びる? 世界的名作『百年の孤独』【読書感想】

読んだ本
記事内にアフィリエイト広告が含まれています。

突然ですが『百年の孤独』という海外の文学作品をご存知でしょうか?

本屋で平積みされているのを見たことある人も多いのではと思います。

何でも「文庫化されたら世界が滅びる!」と言われていたそうで。

「世界が滅びる前にぜひ!」というポップに惹かれて購入しました。

本屋の店員さんのセンス凄い(笑)

ちなみになぜ「世界が滅びる!」などと言われたのかは謎です。

1972年に日本で初出版されてから、一度も文庫化されたことがなかったらしい。

そんな曰くつき(?)の本を無事に読了しましたので感想書こうと思います。

スポンサーリンク
広告の表示がブロックされています。

『百年の孤独』ガブリエル・ガルシア=マルケス(著)

著者はコロンビア出身。

『百年の孤独』は1967年に出版され、世界的ベストセラーに。

世界46ヶ国の言語に翻訳され、累計発行部数は約5000万部。

日本では1972年に新潮社から出版されたそうです。

そんな世界的な名作ですが、私がこの本を店頭で目にし、ポップに惹かれて購入したのはつい3~4週間ほど前のこと。

それまでこの名作の存在をまったく存じ上げておりませんでした……(;´∀`)

海外文学って、面白く感じるかどうかは『翻訳次第』なところもある気がして、どうしても敬遠しがちです。

しかしこの『百年の孤独』に関しては不思議なことに、あっという間に世界観に没入して、気づけば1ヶ月も経たないうちに読了してました。

いやあ本当に不思議!

そして、面白かった!

ざっくりとしたあらすじ

物語の舞台は『マコンド』という架空の村。

そのマコンド村を創設した『ブエンディア』という一族が繫栄し、やがて衰退するまでの100年間の物語。

……本当に超ざっくりとした解説になりましたが、興味のある方はウィキペディアに割と詳しく書かれていますのでご覧になってください(←丸投げ)
※ややネタバレも含まれているので注意です

読み切れずに挫折する人が多数?

私自身も最初の数ページを読んだあたりで感じたことですが、

普段まったく読書しないor慣れてない人には不向きな作品だと思います!

ネットで検索すると、難し過ぎて挫折したとか、読了した人でも「やっと読み終わった!(←読了に相当時間が掛かった)」という口コミをよく見かけます。

主な難解ポイント
  1. 物語開始から終了まで改行なしで続く文章
  2. 一族の間で、同じ名前が継承される
  3. 非現実的な現象が当たり前のように起こる

1.物語開始から終了まで改行なしで続く文章

海外文学あるあるかもですが、物語の開始から終了まで、ほぼ改行なしの文章がひたすら続きます。

改行どころか、何なら句点(。)すらない。

ないというか、ひとつの文章が長すぎて、句点になかなかたどり着かない。

その長い文章中にいろんな比喩的表現が詰め込まれていて、長文読解に不慣れな人はそれだけで嫌になるかもしれません。

個人的に、敢えて何も考えずに文章をそのまま受け入れる姿勢で読んだ方が良いのではと思います。

文章中の表現一つひとつにいちいち意味を見出そうと奮闘するのではなく、分かるところは受け入れて、分かりづらいところは「ああ、この人は今とにかく恋に悩んでるのね」という具合に、ざっくりと雰囲気だけ察しておく。

こんな雑な読み方をしてしまいましたが、それでも私はこの物語を最後まで楽しむことができました。

2.一族の間で、同じ名前が継承される

100年続くブエンディア家ですが、生まれた子供が父親や祖父の名前を継いだりするせいで、同じ名前の人物が一族の中に大勢出て来てかなり混乱します。

巻頭の家系図を何度見返したことか……。

※例(ウィキペディア参考)

  • 第1世代:ホセ・アルカディオ・ブエンディア(♂)
  • 第2世代:ホセ・アルカディオ(※ホセ・アルカディオ・ブエンディアの長男)
  • 第3世代:アルカディオ(※ホセ・アルカディオの長男)
  • 第4世代:ホセ・アルカディオ・セグンド(アルカディオの長男)

……こんな具合に。

また、妻以外の女性との間に出来た子供にも自分の名前を継がせたりして、これがブエンディア一族の家系図を更にややこしいものにしています。

3.非現実的な現象が当たり前のように起こる

  • 死んだ友人や家族の霊が普通に屋敷の中をうろついている。会話もする
  • 空飛ぶ絨毯が出てくる
  • 4年11ヶ月と2日も雨が降り続き、その後、10年間も旱魃が続く

上記3つは比喩でも何でもなく『普通に』登場します。

ブエンディア家の日常生活の中に、さも当たり前のように「●●の霊が現れた」という感じで。

「おいおい、いきなりホラー展開かいな!?」と驚いたのは、ほんの一瞬。

次の展開が気になって読み進めるうちに、あっという間にその不思議世界にどっぷりはまり込んでいる自分がいました。

『空飛ぶ絨毯』に関しても同様に。

比喩でも何でもなく普通に出て来て、マコンド村で大流行します。

『非現実的な出来事』を『現実的』に描く――『マジックリアリズム』という手法だそうです。

これを『面白い』と感じるか『変だ』と感じるかで、この作品の好きor嫌いがはっきり分かれるかと思います。

私自身は、この手法に関しても文章の時と同様に「こういうものなんだ」と素直に受け入れるに徹しました。

マコンド村に生きる人々にとって、『非現実的』と言われる現象も全部ひっくるめて『日常』なのだと。

私たちの暮らしも言わば、マジックリアリズム??

読みながらふと思ったことなのですが、私たちの日常生活の中でも『マジックリアリズム的な要素』ってありませんかね?

私たちの場合で考えるなら、『現実的な日常』の中に混在する『非現実的な要素』という感じでしょうか?
※外国のことは分からないので、あくまで日本の場合です。

『百年の孤独』の中の難解ポイントのひとつとして『死んだ友人や家族の霊が出てくる』を挙げましたが、日本には『お盆』という風習があり、実際に「幽霊を見たことがある」もしくは「霊の存在を信じている」という人も結構いますよね。

これだけ発展した現代の日本であっても、お盆になれば親族一同集まってお墓参りしたり、お寺や神社に参拝するときはきっちり慣習に倣い、両手を合わせて祈りを捧げる人が大半です。

古くからの伝統や風習を『マジックリアリズム』になぞらえるのは不適切かもしれません。

けれど、何気ない暮らしの中に『目には見えない非現実的な世界観』が混在していて、それを現実的な暮らしの中に当然のように溶け込ませている、それが日本人ではないかと私は思います。

そして、そういう世界観を題材にした小説もたくさんありますよね。

そんなふうに考えると、『百年の孤独』で用いられるマジックリアリズムの数々も、案外すんなり受け入れらるんじゃないかと思うのですが、如何でしょう?

人それぞれの『孤独』

男女問わず、奇人変人揃いのブエンディア一族。

具体的にどこがどう『奇』で『変』なのかは登場人物それぞれですが、例えどれだけ狂ったように見えたとしても、当の本人にはそれなりの心情があり、それを誰にも理解してもらえない。

ある事情から、生涯決して誰の愛も受けないと心に決め、部屋に籠ってひたすら縫い物ばかりを続ける娘。

内向的な少年から、やがて革命に参加して英雄となり、大勢の女性との間に計18人もの子を授かったにも関わらず、晩年は精神を病み、誰よりもひっそりと寂しい死を迎えた息子。

王妃になるための教育を受けて生きて来たのに、ひょんなことからブエンディア家の男と結婚することになり、苦労続きの日々や自分自身の運命を憎み続けた嫁。

誰よりも家族のために尽くし、精一杯の愛情を注いだにも関わらず、その愛をろくに受け止めてもらえないまま、120年以上も生きた母。

他にもあらゆる人物が各々『孤独』を抱えているのですが、基本的に誰も『本心』を打ち明けたりしないものだから、ひどく『独りよがり』であるように感じました。

ブエンディア家の屋敷には大勢の家族が共に暮らしているというのに、この一族は誰もが『孤独』であり続けています。

愛し合う男女の仲であっても、どこか一抹の寂しさや不穏が付きまとう。

例えどれだけ感情をぶちまけたとしても、結局はそれぞれの人が、それぞれの生を全うするしかない。

どれだけ寂しくて辛くても、他人を自分の意のままに変えることなんて出来やしない。

愛を持って接したとしても、その愛を受け取るかどうかは相手次第。

ブエンディア一族は皆、生を全うし天に召されるその時ですら孤独です。

例え家族が暮らす屋敷の中で息を引き取ったとしても、彼らの死にはどこか寂しさや虚しさが漂っています。

ブエンディア家の人々が抱える孤独というのは、現代社会を生きる私たちが抱える孤独と、本質的な部分では違わないのではと感じました。

結婚して子宝に恵まれて、その血筋が例え100年先まで継承されたとしても、それぞれの人生はそれぞれで決めるべきことだし、どう転んで行くかもその人次第でしかない。

家族に看取られながらも、後悔や無念に苛まれたまま終わる人は大勢いる。

人も家系も、どんなに栄華を極めたとしても絶えるときは虚しく、呆気ない。

でも人生ってきっと、そんなもの。

ブエンディア家の人々、そして現実世界を生きる私たちは、そんな諦念にも似た孤独感を常に抱えながら生きているのではないでしょうか。

まとめ

ご紹介した本

【百年の孤独】

  • 著者:ガブリエル・ガルシア=マルケス
  • 出版:新潮文庫
  • マジックリアリズム⇒『非現実的な出来事』を『現実的』に描く手法
  • 改行なしで延々続く文章と、独特な比喩表現
  • 親の名前を子に継がせる習わしと、ややこしい家系図
  • 奇人変人揃いのブエンディア一族と、それぞれが抱える『孤独』

余談ですが、文庫版『百年の孤独』のあとがきを作家の筒井康隆氏が書かれていて、同じガブリエル・ガルシア=マルケス作の『族長の秋』をやたらとオススメしているんですよ。

「いいから読め!」という感じで。

おかげで今、すっかり興味を惹かれている私です(笑)

タイトルとURLをコピーしました