突然ですが『耳すま症候群』ってご存知ですか?
『耳すま』というのはご存知、スタジオジブリの名作映画『耳をすませば』の略称。
8月26日(金)の金曜ロードショーで放送されていましたね。
そんな『耳すま』を観ると、
- 辛い
- 鬱になる
- 死にたくなる
というネガティブな感情が湧いてどうしようもなくなってしまうという症状が、実際にあるそうです。
耳すま症候群とは?
耳をすませば症候群というのは、この映画を見た後に、感傷的な気持ちになることを言います。
映画を見た後にむなしい気持ちになる人が多いようであり、自分の人生は何だったんだろうか、見なければよかったというマイナスのイメージを持つのです。
今の世の中は決して生きやすい環境とは言えずに、純粋な夢や恋に生きるのも難しく、そのような環境が、耳をすませば症候群を引き起こすのかもしれません。
引用元:医療の仕事.com
恋や進路に悩みながらも青春を爽やかに謳歌する主人公の月島雫に対し、自分自身の青春時代を比較して落ち込んだりしてしまう人は多いようです。
個人的にはテレビドラマや映画、アニメやゲームの登場人物に感情移入したり、自分自身の立場や状況と比較して考えるということ自体は悪いことだとは思いません。
それ自体は『人間の性(さが)』みたいなものだと思ってます。
ただそれが「ムカつく」「死にたくなる」というネガティブな方向に走ってしまうと良くないのかな、と。
そして、そういったネガティブな感情が湧いてしまうのは決して作品のせいではなく、原因は自分自身にあるんですよね。
私的、耳すま症候群
私の場合、中3にして自分のやりたいことや進路をはっきり決める主人公・雫への羨望や嫉妬心が大きいのかなと感じます。
中3で自分の将来を決められる人なんて、現実世界にはそう多くないだろうと分かってはいますが。
アラフォーになった今も「やりたいことが分からない」などと悶々としている私にとって、友人の前で堂々と「物語を書く!」と宣言する雫の姿は(アニメ映画のキャラクターとはいえ)眩しすぎて、思わず画面から目を逸らしてしまうほど。
同じ本を読んでたのに、片方はそれだけでさ。
毎日が何となく過ぎちゃうだけ。
もう片方は進路を決めてどんどん先に進んでいっちゃう。
引用元:スタジオジブリ映画『耳をすませば』より、主人公・雫のセリフ
個人的に、最も心に残った雫のセリフ。
うろ覚えなので所々間違っているかもしれません。
バイオリン職人になるためにイタリア留学を決意した聖司に対し、雫が自分自身の状況と比較して深く落ち込んでいるシーンだったと思います。
「毎日が何となく過ぎる」に任せた結果、気づけばアラフォーになっていた私にとって、耳が痛くなるようなセリフです。
この時点では雫も自分の進路について頭を悩ませているわけですが、この直後に雫は「物語を書く!」と決意します。
雫は、やりたいことも自分が進みたい道も、実は最初から分かっていて、ただ踏み出す勇気が足りなかっただけ。
しかしいざ、その一歩を踏み出すと、あとは目標までまっしぐら。
期限までにしっかり物語を書き終えて、聖司のおじいさんを最初の読者にするという約束も果たし、更に「もっと勉強しなきゃだめなんだ」と自分に足りない部分とも向き合って、高校に行くことを決意する。
両親に「ご心配をおかけしました」と頭を下げ、けじめを付ける15歳の少女の姿を見て湧き起こる、
「私はいったい、何をしてきたんだろう……」
という自己嫌悪。
いろいろ諦めて、逃げて、何事もはっきり決められないまま、何となく年だけ取った自分。
派遣社員として働く今の状況に後悔はないけれど、
「もしも10代・20代の若いうちに、やりたいことを見つけられていたら、今頃どうなっていたか」
……と、そんなことを考えてしまうのも事実です。
今さら戻らない過去の「もしも」のパターンを考えるなんて心底無意味だと、分かってはいるんですけどね。
どんなに落ち込んだとしても、結局は『自分で選んできた結果に過ぎない』のだから。
私的、耳すま症候群・対処法
うっかり『耳すま症候群』に陥った場合どう対処したら良いのか、考えてみました。
↓
- 「所詮、アニメの中の世界だ!」と割り切る
- 少女漫画なんだからヒロインが可愛くてイケメンからプロポーズされる展開も当然だ、と受け入れる
- 観れば辛くなると分かっているなら、そもそも観ない!
……こんなところですかね。月並みかもですが。
上記の2番目についてですが、原作は柊あおいさんという方が描いた少女漫画なんですね。
『りぼん』に掲載されていたとか。
元が少女向けに描かれた作品なのだから、キラキラした青春や恋愛模様も、主人公が何だかんだ可愛くて男子にモテるのも、まあ当然の展開でしょう。
年頃の夢見る少女たちを喜ばせるのが少女漫画というもの。
そうは言っても、なかなか割り切ることができずモヤモヤしてしまうような、夢見る少女じゃいられない(by相川)大人たちに残されたのが『観ない!』という選択肢。
観れば辛くなると分かっているんだから最初から観ない!
結局、これが1番かと。
しかし、それでも地上波放送されるたびに観てしまう私……。
理由はやっぱり「名作だから」なんですよね。
『耳をすませば』は間違いなく名作です!
何だか色々書きましたが、『耳をすませば』は私の中でかなり好きな作品だし、名作だと思ってます。
私的・好きなジブリ作品トップ3↓
- 天空の城ラピュタ
- 魔女の宅急便
- 耳をすませば
私の中ではこのように、トップ3にランクインされてます(笑)
作品の中でリアルに描かれる街並みや登場人物たちの生き生きとした動作、住まいの生活感なんかが観ていて楽しいです。
特に月島家の、程よく散らかった感じが凄く好き。
『人が暮らしている気配』というものが、画面越しにしっかりと伝わってきます。
こういう端々にまでこだわったリアルな表現力は、「さすがジブリ!」という感じですよね。
『耳をすませば』を鑑賞する際は、ひとつひとつの風景を観察してみるのも良い楽しみ方だと思います。
舞台が聖蹟桜ヶ丘
私が『耳をすませば』を好きな理由の中に、舞台が聖蹟桜ヶ丘だから、というのがあります。
聖蹟には親戚が住んでおり、子供の頃からしょっちゅう訪れていたので非常に馴染みのある街です。
駅に停車する全車クリーム色の京王線に懐かしさを覚えたり、京王デパート周辺がリアルに描かれていることに感動したり。
ちなみに『クリーム色の京王線』というのは、実際には真っ白だったのかもしれませんが、幼少期の私には当時の京王線が『バニラアイスクリームの色』に見えており、「美味しそうな色の電車だなあ」なんて思っていたので。
幼い頃から妙な思考を持った変な奴でした。
人によって様々な感情移入が出来る作品
『耳すま症候群』にしろ、風景のひとつひとつにノスタルジックな気分になるにしろ、人それぞれ様々な感情移入をしてしまうというところが、実は1番の魅力なのではないかと思います。
私自身は懐かしさに浸りながらも、少女時代の苦い思い出や、これまでの自分の経緯など、自分が抱える様々な『心の闇』と向き合わされる、複雑な作品という印象です。
けれど、それら全部をひっくるめて名作だと思うし、「また観たいな」と思わせてくれる楽しい作品だと思ってます。
というか、ここまで人々に複雑な感情を抱かせる青春映画も珍しいのではないでしょうか。
さすがジブリ!
また観たいです(笑)