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性差別は男性を含め、全ての人を不幸にする【読書感想:ルース・ベイダー・ギンズバーグの「悪名高き」生涯】

読んだ本
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ルース・ベイダー・ギンズバーグという人物をご存じでしょうか?

1993年から27年間に渡り、アメリカの連邦最高裁判事を務めた女性です。

アメリカでは、彼女の名前のイニシャルをとった『RBG』という呼称で親しまれ、リベラル派の判事として絶大な支持を得ていたそうです。

先日、書店で彼女の活躍を描いた書籍を発見し、タイトルと表紙のインパクトから思わず衝動買いしてしまいました。

実際読んでみたところ、女性やマイノリティーの権利のために尽力する彼女の姿や、アメリカが現代に於いても抱え続ける深刻な問題などが分かり、非常に興味深い内容でした。

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「全ての人に害をなす」性差別撤廃のために闘い続けた女性『RBG』

アメリカ合衆国連邦最高裁判事 ルース・ベイダー・ギンズバーグの「悪名高き」生涯

  • 著者:イリーン・カーモン&シャナ・クニズニク
  • 訳:柴田さとみ
  • 出版社:光文社

金の冠を被った女性が、知的な眼差しを向けている……この表紙絵、印象的ではありませんか?

タイトルに『悪名高き』とありますが、決して悪いことをした人ではありません。

具体的にどういう経歴を持つ女性なのかは、ウィキペディアをご覧いただければと(←説明丸投げ)

この本では2015年までのRBGの活躍について書かれています。

RBGは女性が仕事を選べなかった時代に弁護士として働き、あらゆる性差別と闘ってきました。

そして1993年、当時のビル・クリントン大統領から連邦最高裁判事に指名され、以後27年間に渡り、性差別を含めた様々な社会問題に取り組んできました。

私が特に惹かれたのは、これほどの功績を上げながらも普段のRBGを評する言葉が「控えめで穏健」ということ。

また、一気に全てをガラッと変えようとするのではなく、一歩一歩、時間をかけて着実に取り組むべきだと考えていたそうです。

強い女性には違いありませんが、とは言え『男勝り』とも違う人柄に、気づけば親しみを感じていました。

現代のアメリカでも深刻な問題

性差別は日本のみならず、『自由の国』を称するアメリカでも深刻なようで、西暦2000年代に入って尚、あらゆる問題が生じていることが分かります。

特にこの本の中で印象的だったのが、中絶や避妊に関する問題。

少し調べたところ、アメリカでは2024年1月時点で、保守派の勢力が強い15の州で中絶がほぼ禁止されているそうです。

アメリカの場合、宗教や人種も絡んでくる分、ある意味で日本よりも根が深く、解決が困難なのかもしれません。

男女が共に歩むために

RBGは「彼女は女性解放のために活動している」と紹介されると、

「女性解放ではありません。女性と男性の解放です!」

……と反論していたそうです。

「性差別は全ての人を苦しめる」と、RBGは強く信じていました。

実際、RBGは『女性の権利プロジェクト』の一員である一方、男性原告の訴訟もたくさん扱っていたそうです。

例として、妻に先立たれ、幼い息子を1人で育てている、いわゆる『シングルファザー』の男性が社会保障給付金を申請したところ、「給付金を受けられるのは夫を亡くした妻だけだ」と言われ、断られたというケース。

まさに、旧来の価値観が男性をも苦しめることになるという、RBGの訴えそのものを表しているような事例です。

RBGは当時、この男性の弁護士として法廷に立ち、結果は勝訴となりました。

彼女が男性原告の訴訟も多く扱うことに対し、『女性の権利プロジェクト』の一部からは批判の声も上がっていたそうです。

「これは男性の権利プロジェクトではない」という具合に。

私自身、この批判は平等どころか、却って男女間の溝を深めるだけのように感じます。

RBGは徹底して自身の信念に従い、全ての人を苦しみから解放するために尽力し続けました。

「わたしは、男性と女性は肩を並べて、いっしょにこの世界をより良いものにしていくのだと思っています。

男性がより優れているとは思わないし、同様に、女性がより優れているとも思いません。

最近は、あらゆる人生を歩むあらゆる人たちの才能が活用されはじめています。かつてのように閉ざされた扉も、今はもうありません。それは、すばらしいことだとわたしは思います」

引用元:『ルース・ベイダー・ギンズバーグの「悪名高き」生涯』イリーン・カーモン&シャナ・クニズニク(著)

本書の中でも、私が特に印象深く感じたRBGの言葉↑

フェミニズムというのは本来、こういうことなのではないかと思います。

男性ばかりに偏るのは良くないし、女性ばかりに偏るのも良くない。

「共に力を合わせ、より良い社会を作っていきましょう」というのが本来の男女平等の主旨なのではないでしょうか。

真に解放されるべきは男性の方?

女性が平等に扱われるためには、男性が自由でなければならない

引用元:同上

性差別で犠牲になるのは女性だけでなく、実は男性も同じこと。

時代と共に人々の価値観はどんどん進歩して行くものなのに、いつまでも旧来の考え方に囚われて、社会でも家庭でも孤立していく男性は日本にこそ多いのではないでしょうか。

今思えば、母と離婚後に孤独死した私の父も、そうした犠牲者だったのかもしれません。

「女のくせに」とは今ではほとんど言われなくなったと感じますが、「男のくせに」という圧力は未だに男性たちを深く蝕んでいるような気がします。

性差別は全ての人を不幸にする

国の少子化対策について思うのが、女性が働きやすい環境を整えるのと同じくらい、男性の労働環境改善も重要なのではないかということ。

長時間労働、サービス残業、飲み会への強制参加、育児休暇を取得しづらい実態(※パタニティ・ハラスメントと言うそうです)、上司からのパワハラ……など。

女(おまけに独身)の私でもこう思います。「こんな状態で、どうやって家庭に参加しろと言うの?」

劣悪な労働環境が男性(父親)を家庭から切り離し孤立させ、ひいては少子化を促しているとしか思えません。

婚活をする女性の中に、未だに専業主婦を望む人が多い理由も、職場で男性たちの過酷な状況を目にしているからではないでしょうか。

「とてもこんな働き方は出来ないし、したくない」

「こんなに働きながら子育てするなんて無理」

女性たちがこう感じてしまったとしても、無理はないと思います。

国が言う『子育てと仕事の両立』って結局、女性(母親)だけに求められているようなものだし。

未だに日本では『男は外、女は家』という旧来の価値観が根強く、それにより女性はもちろん、男性をも不幸に陥れている。

『妻と子供を養う義務』が男性を追い詰め、結果的に妻子を苦しめている。

「性差別はすべての人に害をなすものだとわたしは思います。男性にとっても、子どもにとってもです」

引用元:同上

RBGのこの言葉を、私たちはもっと強く認識するべきなのだと思います。

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