求人検索していると、やたら目につく言葉があります。
それは、
『アットホームな職場です!』
……というアピール。
人間関係を気にする人のために、その職場で働いている人たちの雰囲気が良好であることを簡潔に伝えてくれているわけですが、正直この一文を見ると物凄く警戒してしまいます。
個人的に要注意案件だとすら思ってます。
なぜそう思うのか、私自身の体験談を交えながらご説明します。
私が『アットホームな職場』を危険視する理由
理由は主に以下の3点です。
- 既に形成された人間関係に馴染むのは至難の業
- 独自のルールや常識を察しなければならない
- なにかと詮索される
上記について、私が過去に勤めていたとある職場での体験を例に、順番にご説明いたします。
- あくまで、私個人の体験談です
- アットホームをアピールしている求人が全てブラックだとは限りません
既に形成された人間関係に馴染むのは至難の業
30代前半の頃、事務のアルバイトとして某企業に勤めていました。
配属される部署について求人には、
- アットホームな雰囲気
- 皆さん長く勤めています
……などと記載あり。
人間関係が良好で離職率が低い職場なのだろうと判断し、入社を決意。
部署全体の人数はだいたい50~60人くらいで、業務ごとに細かくチーム分けされていました。
実際に私が配属されたチームについて、簡単にまとめると以下の通り↓
- 人数は私を除いて10名程
- リーダーの男性1人。他は女性。
- 女性たちは全員、私と同じアルバイト
- 40代半ば~60代と年齢層高め
- 10年近く勤めている人がほとんど
- 当時30代前半の私がチーム最年少
- 部署全体で見ても年齢層は高く、ほとんどが女性
求人票に記載の通り、全員長く勤めていて、仲の良い雰囲気でした。
チームで進める仕事だったこともあり、長年同じメンバーで働いてきた先輩方の間には強い仲間意識や連帯感といったものが形成されていて、仕事中も頻繁に声をかけ合って疑問点などを相談したり、時には雑談も交えたりと、確かにアットホームではありました。
そして、そんなアットホームの中に、私が新たなメンバーとして加わったわけです。
最初は「雰囲気の良い人たちみたいだし、すぐ慣れるだろう」と思っていたのですが、それは完全に甘い考えでした。
既に確固たる絆によって結ばれた人間関係の中に馴染むのは想像以上に大変だし、ストレスも相当かかります。
このあたりは何となく、昔の『村社会』を想像すると分かりやすいかなと思います。
長年同じメンバーでやって来ただけに結束は強いけれど、物凄く閉鎖的なコミュニティでもあるんですよね。
もちろん、全然問題なく馴染める人もいるでしょう。
しかし私はそのように上手く立ち回れるタイプの人間ではなく、狭いコミュニティ特有の空気感を察することが出来ず、顰蹙を買うこともしばしば。
基本的に単独行動を好み、お昼休憩も1人で過ごしたいタイプの私が『アットホーム』なチームの中で浮いた存在となるのは時間の問題でした。
『出る杭は打たれる』と言いますが、皆と同じように行動できない人間は『輪を乱す存在』とみなされ煙たがられます。
怖ろしいことに、1度そういうレッテルを貼られると、挽回することはほぼ不可能です。
アットホームなだけに横の繋がりが強く、ちょっとした噂もチームを超えて広がります。
女性ばかりの職場だったので、特にそういう傾向が強かったのかもしれません。
※私も女なので、あまりこういう言い方はしたくないのですが。現実的に見てそういうパターン多いですよね……。
独自のルールや常識を察しなければならない
長年同じチームで協力し合ってきた先輩方の間には、仕事とは別の独自のルールや暗黙の了解がしっかり出来上がっていて、それに沿った行動を新入りの私にも求めているようでした。
求めているというか、『出来て当然』という雰囲気。
私も一応、必死で空気を読んで行動していたつもりなのですが、それらはどれも『先輩方の望む形』ではなかったらしく、たちまち私は先輩方の間で「常識のないダメな奴」という扱いになってしまいました。
「このくらい言わなくても分かって当然でしょ!」
「こんなの社会の常識よ!」
↑こういうようなことを、しょっちゅう言われていた記憶があります。
もちろん、私自身にも問題大有りだったのは事実ですが……。
しかし今、冷静に振り返ってみても、先輩方が言っていた『当然』や『常識』は必ずしも社会の共通認識なのではなく、先輩方同士の狭いコミュニティ内での常識に過ぎないものがほとんどだとしか思えないんですけどね。
なにかと詮索される
アットホームで皆さん仲が良いだけに、仕事中でも私語雑談が飛び交っていました。
- 昨日見たテレビ
- 家族の愚痴
- 他のチームの人の陰口
- 通っているスポーツジムでの出来事
- 次の休みの予定
……など。
どれも仕事中にする必要のない、はっきり言ってしょうもない話ばかりなのですが、とにかく互いに情報を共有し合っていないと気が済まないという意識の表れなのかもしれません。
雑談が苦手な私はひたすら黙って仕事をしていたのですが、そんな私の姿は先輩方の目には奇異に映っていたのでしょう。
「どこに住んでるの?」
「実家暮らし?」
「家族構成は?」
「休みの日は何してるの?」
「今、何歳なの?」
「彼氏はいるの?」
「仕事終わって家に帰った後、いつも何してるの?」
↑他にもいろいろプライベートに関わることを根掘り葉掘り訊かれました。
仕事中に。
気を遣ってくれているのかもしれないな、と思い正直に答えたのですが、これがあっという間にチーム内はもちろん、隣の島(※島型オフィスだった)のチームにも広まって、私のプライベートな情報が見事に暴露されてしまったのでした。
それ以降、「下手に雑談に加わると墓穴を掘るだけだ」と学んだ私は、業務上で質問したい時以外は一切口を利くまいと決めたのですが、向こうは私のそんな決意など知ったことじゃないので構わず雑談の輪に引き込もうとします。
アットホームゆえに『仲間なんだから、お互いにプライベートなことまで何でも話し合うのが当たり前』という意識が強いです。
積極的に自分の情報を打ち明けようとしない私のような人間は「協調性がない」などと言われ、非常に居心地の悪い想いをすることになります。
「仕事とプライベートは分けたい」「仕事と関係ないことを詮索されたくない」と考える人は、アットホームな職場は避けた方が良いです。
コミュ障を自覚するなら、アットホームな職場は避けるべし!
私自身、昔から人間関係で失敗することが多く、
「アットホームな職場なら、私のような人間でもやって行けるかも」
などと考えていたのですが、逆です。
コミュ障な人ほど、アットホームな職場は辛いだけ!
既に出来上がった村社会的コミュニティの中にとけ込むには、相当ハイレベルなコミュニケーション能力が必要です。
私が思うに、コミュ障な人が馴染みやすい職場はアットホームとは正反対の、ビジネスライクな職場です。
- 仕事とプライベートは、はっきり区別する
- 過度なコミュニケーションは不要
- 仕事仲間であっても適度な距離を保つ
- 仕事のフォローはしっかりする
- 静かで落ち着いている
ドライな職場とも言うのでしょうか。
人間関係にいちいち惑わされず、自分の仕事だけに集中できる職場であればストレスも少なく、長く働くことが出来ると思います。
というか会社って本来、仕事さえ出来ていればそれで充分なはずなんですけどね。
結論:アットホームを謳う求人には要注意!
以上はあくまで私個人の体験談であり、アットホームをアピールしている全ての職場が該当するわけではないと思います。
本当に良い意味でのアットホームな職場も存在するはずです。
しかしそれを求人情報だけで判断するのは難しく、『入社してみないと分からない』のが現実ですよね。
思い切って応募して、採用されて、その後どうなるかはもはや賭けです。
なので求人票に『アットホームな職場です!』と記載されていたら、余程コミュニケーション能力に自信がない限りは避けた方が賢明かと思います。
派遣の求人であれば、応募前に派遣会社に電話して詳しく話を聞いてみるのも良いかもしれません。